フィルムの中の君



子供たちとも打ち解けあい、マリアと7人の子供たちは仲良くなった。
することと言えば勉強と運動だけだった子供たちに、遊びや音楽を教える。


『そんなことしたらお父様に叱られちゃう!!』

『怒るとすっごく怖いんだよ』


そんな子供たちに、ふふふと笑うとマリアは言った。


『怒られたっていいじゃない!みんなと一緒に私も怒られるわ』
とても家庭教師とは思えぬ発言。


『でもマリア先生は家庭教師辞めさせられちゃうかもしれないよ?』


長女の発言はごもっともだった。
辞めさせられるということは、修道院長との約束を果たせなかったということ。


確かにそうねぇ…と悩むマリア。


『でもそうなったら、私あなたたちと友達になれるじゃないの!
友達と遊んだり歌ったりするのはとても楽しいわ!』


こうして一向に姿勢の変わらないマリアに子供たちは距離を縮めていく。
勉強しか知らなかった7人にマリアが子供のころよくやった遊びや、音楽を一から教えた。


しかし子供たちに勉強と運動以外をさせて、あのトラップ大佐が黙っているわけがない。


ある日呼び出されたマリアは大佐の自室にいた。大きな椅子に座っている大佐は黙って彼女を見た。


『あの…ご用件は?』


『それは私の質問だな。
君は一体何をしにこの屋敷に来た』


2人の間に走る緊張感と重い空気。
会場全体にその空気が伝わる。


『私が修道院に依頼したのは家庭教師だ。子供たちの遊び相手ではない』


その冷ややかな目線。
周囲に恐れられる退役軍人なだけある。


しかしマリアは臆することなく口を開いた。


『ですが、それだけでいいとは私は思えません。勉強は確かに大事です。でもそれ以上に大切なことの方が多いのでは無いですか?』


『何?馬鹿馬鹿しい。
私に反論するつもりか?』


立ち上がった大佐は大きな歩幅でマリアに歩み寄った。
近くに立つとその存在に圧倒されそうになる。


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