フィルムの中の君
ランチタイムでshow!の出演翌日、昴が学校へ行くと予想通り生徒たちがざわついていた。
その騒がしさは午前中だけにとどまらず、お昼休みでさえ昴を見ようと教室の外に大勢いる状態。
「はぁーっ…」
忙しさなのか何なのか出たため息。
ピトっと首元に冷たいものを感じびくりと後ろを見ると、いたずらっ子が立っていた。
「ビックリした…芽衣か」
「女優さんは大変だねぇ、はいこれ」
買ったばかりであろう冷たいサイダーを差し出される。
ペットボトルの蓋を開けると、プシュ…と炭酸の音がした。
「ありがとう!」
いーえ!と答える芽衣が持っていた物も同じサイダーのペットボトルだった。
ふふふ、と嬉しそうに笑う芽衣。
「え、どうしたの?」
「昴が1日学校にいるの久しぶりだな〜って思って。最近お仕事で忙しそうだったから」
ドラマ(黒鳥)が始まる前は普通に学校来ていたりもしたが、最近ではなかなか1日学校にいることも少なくなっていた。
「久しぶりにお昼一緒に食べようよ」
「もちろんそのつもり!」
芽衣が机に広げたのはまるでお重のようなお弁当箱。
予想外な大きさに昴は目を丸くした。
「昴お弁当持ってきてないでしょ」
「いや、確かに今日お弁当持ってないんだけど…」
はい、これー!と割り箸を差し出す芽衣。
「お母さんがね、昴が忙しそうだから栄養あるもの食べて!って」
蓋を開けると色とりどりなおかずが沢山入っていた。
さすが料理上手なお母さんが作るお弁当だ…と昴は感心する。
甘い玉子焼き、タコさんウィンナー、
ミートボール、トマトのサラダ、
エビのグラタン、パスタ
どれもが美味しかった。
ねぇ…芽衣、
サイダーを一口飲んだ昴はそっと言う。
「お母さんにありがとうございますって伝えておいてね!お弁当美味しかったですって」
「了解です!」
「あ、あと………ね」
昴の言葉に芽衣はふふっと笑う。
当たり前でしょ?昴とあたしの仲なんだから!とピースして言った。
「あ、あと…
芽衣、本当にありがとうね」