フィルムの中の君
「しかも気付いてた?」
と笑いながら優は話を続けた。
「クラスの奴が昴の友達と一緒にいたんだよ。…しかも真ん中の席を取りやがって」
ねぇ!と釣られて昴も笑ってしまう。
「いつも私と一緒にいる子でしょ?芽衣って言うんだけど、隣にいた子って優の友達だったんだ」
「知らない間にそんな仲になってたのか」
(これは海斗が知ったら怒るだろうなぁ…。あいつ1人で指揮振って頑張ってたし)
そうだね〜、と返そうとするのと同時に数人の生徒がバタバタと舞台裏にやって来た。
「宮藤くん、櫻井さん、お疲れ様です!2人とも凄かったです!」
「皆さんもお疲れ様でした」
2人はパッとスイッチが入ったようににこやかな笑顔を浮かべていた。
「で、終わってすぐにあれなんですけどぉ…これから打ち上げというか、まぁそういうのやろうって話になってて…」
もじもじと演劇部の女の子が優に話しかける。
「宮藤くんも櫻井さんも良かったら…その…来ませんか?」
いいねー!と昴が口を開く前に、それは優によって制止された。
「ありがたいけどこれから少し用事があって…。挨拶だけして俺たちは先に失礼させてもらうよ、ごめんね」
勝手に不参加の返事をされて控え室(体育館裏にある小さなロッカー)に戻ろうとする優。
ワケがわからぬまま昴も一緒にくっ付いて行った。
(え…ところで用事って何よ…)