フィルムの中の君
衣装から制服に着替え終わった昴は更衣室から出ると、すでに優は終わって外で待っていた。
「着替えるの早いね…早着替え?」
「まぁ女の子に比べたら男なんてみんなこんなもんでしょ」
「へぇ…」
そんなものですか、と自分の中で完結させて歩き始めた。
すでに観客は帰ったようで体育館はガラリとしていた。
とは言え片付けのために残っているスタッフの生徒たちが動いている。
更衣室から廊下に出るには体育館の中を通らなければならず、邪魔にならないよう端っこの方を通っていた。
「演劇部にも合唱部にも挨拶したし、あとは楽器の人たちすれば…」
打ち上げを断りさっさと着替えて帰ろうとしていたわけでは無かった。
2人は着替える前に全員揃っていた演劇部と合唱部の集まりに顔を出し、最後の挨拶を済ませていた。
「…管弦と言えばあいつか」
体育館の中をキョロキョロと視線を動かす優。
目的の人物を発見すると、相手の方もこちらに気付き近寄ってきた。
「お疲れー!良かったよ」
スコアを抱えた管弦楽部の指揮者は友人の演技を褒める。
「妙に素直だな、どうした」
「あ、僕が言ったのは櫻井さんね!本当に素晴らしい舞台でした、お疲れ様!」
それにはありがとうとにこやかに返す昴。
おい…と優は海斗をジロリと見る。
「冗談冗談!嘘だってば〜。
プロの俳優の演技っていうのを初めて見たけど、やっぱり違うね」
「そんなのわかってるよ、海斗もお疲れ様。あの大人数纏めるのは大変だろ」