フィルムの中の君
「私もです!!!皆さんとこの舞台を作ることが出来て、本当に幸せです!
あんなに伸びやかに舞台上で演じれたのは、この演奏があったからだと思っています。
皆さん本当にありがとうございました!」
どこかの舞台挨拶だと突っ込みたくなるほどに歓声が沸き起こった。
長い拍手と歓声を止めたのは部長でありこの舞台の指揮者だった。
「ということで2人からの挨拶は以上でーす。皆さんは片付けに戻ってください。はい、解散!」
はーい、とまた作業に戻る部員たち。
さて帰ろうか、という2人に海斗は言った。
「2人とも管弦楽をあんなに褒めてくれてありがとう」
「本当に良かった」
満面の笑みで優は答えた。
「そうだ…音楽をやってる人間は必ず言われることがあるんだけど、何だかわかる?」
思いがけない言葉に2人は目が点になる。
「音楽は止まらない、途中で止まることなく続いていく。例え間違った箇所があったとしても続けなきゃいけないんだ」
音楽は生きてるから、と付け加えた。
突然の話に戸惑った昴が聞く。
「久石くん、それはどういう…」
「そのまま進めて大きな拍手がもらえるかもしれないし、もしかしてブーイングの嵐になるかもしれない。
けど1度始まった音楽は途中で止めちゃいけないし、止まらないんだ…例えどんな結果になってもね。
それって何か僕たち人間みたいだなぁと」
意図を察した優は息を飲むようにハッとなった。
「どんな結果になっても生きてる限り止まっちゃ勿体ないよ。
とりあえず思うように進んでみればいいのに。…ねぇ?宮藤くん」
ニヤリと笑う海斗に呆れてため息が出そうだったが、負けじと優も勝ち誇った笑みを浮かべて返す。
「言われなくてもそうするつもり。
でもコンダクターには言われたくないけどな」
何かが吹っ切れたように昴の腕を掴んで足早に外へと出て行った。
途中昴は申し訳無さそうに何度も振り返りお辞儀をしていた。
(かっこつけたこと言ったけど、あれじゃ櫻井さんが大変だな…)
苦笑いを浮かべたコンダクター(指揮者)は自分の片付けの作業に取り掛かった。