フィルムの中の君
scene 2
大々的にゲストの名前が公表されてから黒鳥初の撮影となる今日。
メイクを終えた出演者たちが控え室に集まっていた。
「昴ちゃん、今日も可愛いねぇ」
全身黒いスーツ(衣装)でビシッと決めた真田が控え室に入ってきた。
「真田さん!」
ハルキさんって呼んでくれていいんだよ?とお得意のセリフを1つ。
役者としてはすごいのに人間としていまいちだったりする。
「…ちょっと真田!」
お手洗いから戻ってきた三枝は青いタイトなワンピースを着ていた。
椅子にかけてあった白衣を着ると昴と真田の間に立つ。
「私の昴ちゃんに変なことしないで!」
「なんだよ三枝、彼女はみんなの天使だ」
黒鳥の現場で度々見られる大女優vs人気俳優の口論。(というかくだらない喧嘩)
何で私が理由になってるんだろ…とは言えず、しれっと気付かれぬよう後ろへ下がる。
「ん、どうした昴ちゃん」
そこへ声をかけたのは野上和彦。
どうしたと言われても昴にだってわからないものは説明のしようがない。
野上は三枝vs真田を見るやすぐにため息を漏らした。
「本当にあの二人は…
昴ちゃんも大変だねぇ」
撮影が始まり仲良くなるにつれて、役者陣やスタッフたちの素の姿をよく見るようになっていた。
昴は返す言葉も無く苦笑いを浮かべていると控え室全体がいきなり静かになった。さっきまでの騒がしさが嘘のよう。
咄嗟のことで昴は状況が掴めず、みんなの視線の先を追った。
そこにいたのは鈴屋監督。
と、噂の若手俳優が隣にいた。