フィルムの中の君




控え室入り口に立つ鈴屋を見て、その場にいた全員が固唾を飲んだ。



「もうわかると思うけど、当初話したスペシャルゲストの宮藤優くんです」



初めまして、と挨拶する傍らで鈴屋は話を続けた。



「彼が演じるのは蘭に欠かせない…
黒鳥という作品に欠かせない役だ」



きっと共演シーンが一番増えるだろう昴は彼の顔をじっと見つめていた。



「あとで宮藤くんが出るシーン撮影するから、みんなよろしく」


それだけ言い残すと鈴屋はスタッフを引き連れ控え室を出て行った。
突然の出来事に口から言葉が出てこない出演者一同。



その沈黙を破ったのは宮藤優。
出演者全員に一人ずつ挨拶をして回り始めた。


「またよろしくね、昴ちゃん」
と、最後に挨拶に来た昴に右手を差し出し握手を求める。


「あ…うん、よろしくお願いします」



優とは前に一度だけ会ったことがあった。まさか優がそれを覚えてるとは思わず昴は驚く。



まさに黒鳥の話のよう、
突然嵐は訪れたーー。



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