フィルムの中の君
水島さーん!
昴の声に呼ばれリビングへ向かう。
「今度はなに?昴」
「宮藤優くん、ってさ…
今まで何してたのかな?」
唐突な質問に困る水島。
濡れた髪を乾かしながら昴は続けた。
「私が会ったときはまだ小学校6年とかだったでしょ?でもそれから見なくなって、またテレビや舞台に出るようになった。何かあったのかな」
そう言われてもなぁ…と水島は言う。
「中学1・2年生の間は一切仕事を受けなかったとしか聞いてない。
復帰したのは3年の秋ぐらいから、だったかな」
「そうだよね…ごめんね水島さん、
どうでもいいこと聞いちゃって」
いいのよー!と返し水島はキッチンへと戻る。
沸かし途中のお湯をポットへと移した。
ー「どうでもいい」…ねぇ。
そんなこと思ってないくせに。
ドライヤーの音が消えたな、と思ったのは束の間。バタバタと足音が近づいて来た。
「すーばーる!夜は静かにって言ってるでしょ!?」
思わず出る母親のような口調に水島本人でさえため息が出る。
「でも鈴屋監督が宮藤くんをキャスティングしたのには理由があると思うんだ!」
ぽかんとしてる水島を置いて、昴は自分の部屋に戻っていった。