フィルムの中の君



最後祖父の葬式が終わり、蘭の許婚である藤崎圭介が菱川家の人間を次々に殺していくというシーン。


想像以上にセリフや動きがリアリティーがあり、グロテスクになっている。


準備は整いあとはカメラが回るのを待つだけ…という段階になって、鈴屋は一旦ストップと告げる。



「ここまで来て鈴屋さんどうしたんだよ」


長年一緒に仕事をしてきた野上でさえ戸惑った。
鈴屋の隣にいる脚本家の石上となにやら相談している。


「悪い…
ちょっと宮藤くんと昴ちゃん来て」


何があったのかとどよめく中、呼び出された2人は監督の後へと着いていく。
そのまま別室へと通され、テーブルを挟んで鈴屋と石上と対面する形で座った。


「この段階まで来て2人には申し訳ないんだが…脚本を変更したい」



「全部じゃないよ。
あの殺人シーンを終えて、蘭と圭介のシーンを変えたいんだ」



黙ったまま昴と優は話を聞いた。



「今…ですか?」



「あぁ、今更になって申し訳ない」



ふと見た優は返事に困っているよう。ここまで急な脚本変更はなかなかない。



そうですか…
と昴は口を開いた。



「変更した方が面白い話になるんですよね?それがお二人のやりたい話なんですよね?」



鈴屋と石上は力強く頷く。



「わかりました、では変更した脚本をください。あとは私たち役者がどこまで出来るかの問題です」



その返事を聞くやいなやすぐに石上は新しい脚本二部を昴に渡した。
隣に座る優へ一部差し出す。



「昴ちゃん…」


「変更してまで面白さを追求した話、役者だったらやらない理由がないでしょ?」



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