フィルムの中の君



いつもと同じように車の中で水島は今日のスケジュールを伝える。



「今日は11時に学校まで迎えに行くからね。そのあと夜まで撮影。オッケー?」



起きたての時とは違い目が覚めた昴はシャキッとして水島の話を聞いていた。
基本的にしっかりしているのだが、どうも寝起きだけはダメということを痛いぐらいに水島は知っている。



なのでいつも運転する車の中で業務連絡しつつ学校まで送り届けるというのが日課だった。



母親がいない彼女は今まで寂しい思いを沢山してきただろう。小さいころから昴を知る水島は近くでその様子を見てきた。


ふと視線に気付いた昴は首を傾げてこっちを見る。どうしたの?と。



「何でもないわよ。
さてと!学校に着きましたよ昴さん」



行ってきまーす!と手を振る昴を見送って、水島は再び車を走らせた。

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