フィルムの中の君
「ちょっと待ってって!優くん!」
引っ張って連れてこられたのは保健室。養護教諭の中里もいなかった。
「ごめん、さっきはいろいろと混乱してたけど今はちゃんと理解出来てるから」
「俺こそごめん、無理矢理手引っ張って来ちゃって」
ここでようやく昴は違和感を感じる。
(俺こそごめん…俺?え、俺?)
「優くん話し方違う…!」
すると優は今更気付いたのかと言わんばかりの目で昴を見る。
「だって優くんって自分のこと僕って言ってたよね!?」
「あれは仕事だから。プライベートな素の自分とはわけてるんだよ」
そしてこれも今更ながらに結構背のある優に見られ圧迫感を感じる昴。
「仕事用と素の自分わけてるの?すごいね優くん、さすが俳優」
馬鹿にしてるのか?とデコピン。
地味にヒリヒリする額を押さえ優を見た。
「何でそんなに演技出来るのに公私分けられないんだよ。寧ろ女優 櫻井昴なんかに敵うわけないだろ」
「そんなこと言われたら、私だって役者として宮藤優に勝てるわけないでしょ!」
お前まだ続ける気か…?と優が言おうとしたその途端、ひょっこりとベットから出てきた中里。
「はいはい役者くんたち。
お互い認めあうのはいいことだけど保健室で大声出して騒がないの」
一喝入れられ大人しくなる2人。
「…で、優くん何組?」
「1組。昴は?」
「……お隣です」