フィルムの中の君
「あ、陸か!おはよう!」
「…仲、いいの?」
質問の意図がわからず聞き返すと、陸はアイツだよ、と1組の方を指指した。
「アイツって…優くん?
まぁ仲悪くはないと思うよ、一応同じ作品に出てたわけだし…。
で、それがどうしたの?」
「……別に」
と自分の席に戻ろうとする陸。
「ねぇ、陸っ!」
昴の声にふと陸の動きが止まる。
「チョコありがとう。美味しかった!」
照れ隠しなのか何も言わず、陸はその場から立ち去ってしまった。
そして昼休みになりチャイムが鳴ったのを合図に廊下には凄まじい足音の数々が響く。
教室からその様子を眺めていると女の子たちが一斉に走っていた。
「お昼休みに全力疾走…
うちの購買ってそんなに人気あったっけ?何かあるの?」
いつも通り一緒にお昼を食べる芽衣、
それから今日は他2人の女の子が一緒にいた。
「先週の水曜日から毎日これ」
昴の目の前に座っているショートカットの女の子が玉子焼きを口に運びながら、呆れ返った口調で言う。
「先週…水曜……って…」
「そう、隣のクラスの俳優くん」
ついに芽衣までもがミーハーな女の子たに呆れているかのような言い方。
大変そう…お昼ぐらいゆっくり食べさせてあげればいいのに、とは口に出さず昴は薄っすら苦笑いを浮かべた。
雑談を交えながら4人でお弁当を食べ、昴は普段なかなか出来ない友達とのランチタイムを味わっていた。
すると…どうやら先ほどよりもキャーキャー言う女の子たちの歓声が近付いて来てるように聞こえる。
いや、まさかねぇ。と思いつつ昴は水島特製のお弁当を食べ続けていた。
しかしどうやら気のせいや勘違いなどでは無いらしい、芽衣を含め一緒にお弁当を食べている友達3人の視線が同じ方を向いていることに気付いた。
ますますその気配は近付いて来て、今その張本人は4人のほぼ真隣と言っていいほどの距離にいた。
「わ、本物の宮藤優…」と1人が漏らし、ゆっくり昴が顔を上げる。