フィルムの中の君



盛り付けた料理をテーブルに並べ、食べ始めようとした時だった。
水島に「あのね」と言われ手を止める。
カバンから出した資料を渡された。



「これ…」
まだ構想段階の映画の資料だった。


「昴にこの話が来てるの」


黒鳥(ブラックバード)での演技と監督 鈴屋栄司からの太鼓判もあり、女優として櫻井昴の評判はかなり上がった。


水島曰く以前に比べオファーの数が物凄い…らしい。



「スパイ物の作品なのよこれ」



「ということは派手なアクションとか入るの?」



「原作はスパイ同士の情報戦が主なんだけど、所々にアクションだったり入ったりしてる。まぁ映画化にあたりどうなるかはわからないけど」



通常アクションの場合数ヶ月前から練習が入ったりする。
本番ぶっつけで出来るのはプロか、かなりの運動神経の持ち主だろう。


「今決まってるキャスティングは、主演が千秋 柳。主要キャストとして藤森大輔、浪川凛太朗、江田かい。あと返事待ちなのがあなたと…宮藤優くん」



(優くんにも話来てるんだ…)
パラパラと資料を捲り映画のあらすじに目を通す。


「昴に来てる役は最年少のスパイ。
簡単に言うと可愛い男の子ってとこ」


あ〜なるほどねぇ、と言いかけ、水島の顔を二度見した。



「可愛い……男の子…?男の子!?」


そうよ!としれっと言いのけるマネージャーに開いた口が塞がらなかった。


「今回男役でのオファー。男装!」


「だんそー…」


突然のことで頭が回らず、キョトンとした顔の昴。
でもいい経験になると思うけどな、と水島は言う。


「今回千秋柳や浪川凛太朗とか実力派俳優がいる豪華な現場で、制作側も相当力入ってるからセットからしてそうとうすごいものになると思う」


それにね、と水島は資料の表面を向け昴の目の前に置いた。



「この映画の監督、鈴屋栄司よ」


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