フィルムの中の君



あっという間に4月は過ぎ、気付いたら5月に入っていた。
じんわりと感じる暑さに思わず愚痴が出そうになるほど。


映画の話もいよいよ本格的になりアクション練習も予定に入ってきた。



とは言っても昴の場合映画のことだけではなく、今出ているドラマやCMの予定も入り学業と両立するにはハードなスケジュール。


自然と学校を欠席することも増えていき、ノートは全て芽衣にお願いして取ってもらってる状態だった。



いつもいつもごめんね、と呟くと電話の向こうで必ず芽衣は笑う。



『大女優 櫻井昴が何言ってんの〜。
大丈夫だってこれぐらい!
あたしに任せといて!ね?』



いつも申し訳ないとは思いつつも友人の優しさに甘えてしまう。
よくないことだとわかっていても、こればっかりは頼ってしまう。



役者って卑怯な生き物だ…
と常々昴は思う。


今日も少しだけ学校に行ったときに芽衣からノートを受け取っていた。
開くと彼女らしい丸くて可愛い字でびっしり書き込まれている。
ピンクや水色などのペンで色分けされているところも彼女らしい。



昴が苦手な数学だったが折角取ってくれた芽衣のためにやらなきゃ!とページをめくった。


ふと目についたのは左上の余白に書かれたクマの絵とメッセージ。

『すばる!無理しすぎないよーに!
頑張らなくていいけど応援してる!』

なんとも芽衣らしい一言とイラストに笑みが溢れた。



(こうやって応援してくれる人がいるんだから、頑張らないわけにはいかない…)



昴は数学の課題を終わらせると明日のアクションに備えてすぐにベットに入った。




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