フィルムの中の君
初アクション練習ということもありいつもより昴は早く目覚めた。
時計を見ると朝の6時。
トントントントン…
包丁を使う音が聞こえリビングへと向かった。
「おはよう昴、今日は早いのね」
「おはよう!なんか目が覚めちゃって」
また緊張でもしてるの〜?なんて水島は笑いながら朝食の用意を進めていく。
昴がテレビを見てぼーっとしてる間に完成したらしくテーブルの上に並べられていた。
「ほら、食べよう昴」
いただきまーすと言ってお味噌汁や焼き魚を平らげていく。
お腹が減っていた女優はこの量を完食するのに時間はかからなかった。
食べ終わり水島が食器を洗っている間に昴は身支度を整える。
毎日急かされてものんびりした性格は一向に改善されることは無い。
「まだやってるの?ほら、急げー」
早起きしたのに何で急かされて、気付けば時間ギリギリになっているのか…
昴本人でさえそれはわからなかった。
これもまた日課となった水島に急げと急かされながら車に乗り、車内で当日の予定を教えてもらう。
「13時までアクション、途中車でお昼とって14時半からドラマの撮影。多分21時頃には終わるでしょ」
「はーい」
予定を聞きながらドラマの台本を必死に読み込む昴。覚え切れていないページを頭に叩き込むことに必死だった。
かなり集中してるから何を言ってもダメだろうな、と察した水島はそれ以上何も言わずに車を走らせた。
アクション現場に着くと数名のキャスト陣やスタッフなどが既にいる。
いつも通り昴は一人ずつ挨拶をしていった。
「おはようございます、櫻井昴です。
よろしくお願いします!」
「君が櫻井昴ちゃんか!噂はかねてより聞いていたよ。会えるの楽しみにしてたんだ」
ビシッとスーツを決め、いかにもダンディなおじさまと言う言葉が似合う俳優。
「初めまして、千秋柳です」
千秋と握手を交わした昴は水島と共に深々と頭を下げ、今度はスタッフへ挨拶に向かう。
そして目の前で監督の鈴屋に紹介された人物が、アクションの監修をする指導係の中田ひろし。
よろしくお願いします!と昴が頭を下げると中田は優しく挨拶を返した。
そのあと全員に挨拶も終わり、いよいよアクション練習へと入っていく。