フィルムの中の君
ストレッチや柔軟を十分にし、
中田の指導の元基本的なことから練習に入っていった。
スパイの情報戦と聞いてあまり派手なことはしないであろう…と思っていた昴の想像を超えた。
銃撃戦のシーンで使うアクションを練習したのだが、かなり動きがハード。
寝た状態で1発発砲し、起き上がって1発、相手の弾を避けるためにバク転をして更に2発。
お手本として中田の動きを見ると絵になる動きなのだが、練習初日とは思えぬハードさに役者陣は付いていくことで精一杯。
その中、華麗にバク転を決め銃を構えた人物がいた。
「さすが浪川さん!すごいですね」
それが人気俳優 浪川凛太朗。
涼しげな顔でアクションをやってのけたのだ。
「じゃあ次藤森さん」と名指しされた藤森大輔が中田のお手本通りの動きを始めた。
さっと起き上がり綺麗なバク転、
何より無駄な動きが感じられない…
あんなに浪川を褒めた藤森だったが、
自らも卒なくこなした。
「すげーな藤森くん」
浪川の賛辞に恥ずかしそうに藤森は頭をかき、はじの方へとずれる。
全出演者が一通り練習を終えたあと、アクション指導の中田に昴は呼ばれた。
隣には監督の鈴屋と演出の岡田がいて、何のことだろうと想像もつかないまま昴は椅子に座る。
「この作品はスパイだから基本的に銃を使ったガンアクションなんだけど、君と千秋さんだけは刀を振るシーンを作ろうと思ってね」
(銃だけでなく刀まで!?)
鈴屋からの提案は昴の想像の範疇を超えた話になってきた。