フィルムの中の君
終業式が終わった数時間後、
昴は水島の運転する車に乗っていた。
いつもと違うのは助手席ではなく後部座席に座っていることと、
昴の隣には仲のいい友人がいること。
「すみません水島さん、
ワガママを言ってしまって…」
その友人…芽衣は申し訳なさそうに運転する水島に声をかけた。
「いいのいいの!昴がいつもお世話になってるからね。それに芽衣ちゃんみたいな可愛い子ならいつでも大歓迎!」
そう楽しそうに水島はハンドルを握る。
昴と芽衣の家は距離があるため、
2人で家まで迎えに行った帰りだった。
水島が玄関先で挨拶をした芽衣の母は
とても朗らかで優しい女性だった。
「でも芽衣のお母さん、
いつ見ても可愛らしい方だね」
中学から仲の良かった2人はお互いの家に何度か行ったこともあり、芽衣の家族は昴のことをとても可愛がってくれていた。
「えー?あり得ない!」と否定する芽衣。
そんなお喋りに夢中になっていると、あっという間にマンションまで着いた。
先に行っててね!と2人を降ろすと
水島は地下の駐車場まで車を動かす。
「水島さん、綺麗な人だよね」
と、囁く芽衣。
身内のようなものだから贔屓目に見るわけではないが、昴から見ても美人だと思うほど。
そして仕事も家のこともこなしてしまう水島は、まさに理想の女性。
「それ言ってあげて。
水島さんとても喜ぶから!」
戻ってきた水島と合流するとエレベーターに乗り部屋に向かう。
「うわぁ…すごいね」
ベランダに出た芽衣は思いっきり空気を吸い込み、景色に目を輝かせる。
そんな芽衣を微笑ましく昴は見ていた。
「じゃあ昴と芽衣ちゃん、
ご飯まで時間あるし好きなことしてていいからね」
水島の言葉と共に2人はソファに座りきゃっきゃと話し始めた。
それからテレビを見たり、夕食を食べたり、あっという間に時間は過ぎる。