フィルムの中の君
一方その頃、高層マンションの一室で
1人ベットに横たわる青年。
無造作にネクタイを外すと床に投げ捨てた。
携帯を見ると時刻は夜の19時。
開いた窓から涼しい風が入る。
完全に暗くなりきってない空を飛ぶ
飛行機が視界に入った。
「連絡する…って言ってもなぁ」
終業式後、そんなことを言った自分に
後悔の念を抱く。
ただ連絡したところでそれだけで済むわけじゃない。
きっと自分のために時間を作って欲しいと言ってしまう。
(でも今相当スケジュール詰まってるよな…)
それは自分も例外では無いのだが、
彼女の忙しさは尋常じゃない。
そうして再び携帯を手にした時ー。
うっ、と目を細める。
「最高のタイミングだ」
かかってきた電話をとった。
「もしもし?」
気怠そうに発した声に相手は心配をする。
『もしもし宮藤くん、体調悪いの?』
と、マネージャーの平井。
「そんなことないですよ。
それよりどうかしたんですか?」
『いや…特に用があるわけじゃないんだけどさ…。もうすぐ映画がクランクインするから、調子はどうかなーって』
平井はマネージャーとしての歴が浅く、
優が2人目の担当だという。
彼が発したその言葉は取って付けたような胡散臭さで苦笑いしか出ない。
(スキャンダルになるようなことは
するなよ…ってことか)
きっと電話を入れたのは平井の考えではなく、社長の指図であろう。
「平井さん、残念ながら今の僕には
そんな相手いませんよ」
優の言葉に平井は息を飲む。
『ははは…ばれてたか。
宮藤くんには敵わないなぁ』
「映画の方も順調です。
なかなかアクションも様になってきましたし」
それはよかった!と平井。
「こっちは大丈夫なんで、
平井さんも自分の仕事進めてください。」
挨拶を終えると機械音が流れる。
電話が切れたことを確認するとベットから起き上がった。
先ほどよりも外は暗くなっており、
時刻は20時前。
左手で素早くメールを打つと携帯を置いた。