フィルムの中の君
学校が夏休みに入ってから1週間ほどで映画『コードネーム』はクランクインになった。
黒鳥(ブラックバード)の時もそうだったが、大物役者たちが集まっている。
メイクを終えた役者たちが一人一人と紹介されていく。
「斎藤次郎役の宮藤優さんです!!」
スタッフの紹介に現場はわぁっとなり大きな拍手が贈られた。
鈴屋が一人だけいない役者の状況をスタッフに尋ねる。
「そろそろ終わるそうなんですが…」とキョロキョロし、頭を下げていた。
「すみません皆さん、
大変お待たせしました」
スタジオに入ってきたのは華奢な体型の青年。ダークな色のスーツを身に纏い、ワインレッドのネクタイを締めていた。
色白でまだあどけなさが残る。
先ほど鈴屋に尋ねられたスタッフは安堵のため息を漏らし、最後の出演者を紹介した。
「雪村三成役 櫻井昴さんです!!!」
「櫻井昴です!
よろしくお願いします!!」
一際大きい拍手がスタジオを包んだ。
じっと昴を見る優。
その視線に気付いたようで昴は駆け寄ってきた。
「優!その格好似合ってるね!」
と笑顔を向ける昴。
かっちりとした軍服を着た姿はいつもとは違い、大人の雰囲気が漂っていた。
日本中にいる宮藤優ファンは卒倒するであろう。
「昴こそいいじゃん、それ」
「あ、ありがとう…」
慣れない男装に恥ずかしがる昴。
「何照れてるんだよ」
と指摘され、更に顔を赤くした。
「そ…んなことないもん!!」
はいはい、とムキに反論する昴をからかうかのように宥める優。
それでは撮影に入ります!というスタッフの指示に出演者がそれぞれ位置につく。
昴も自分の位置につこうとした。
しかし…
「本当可愛いなぁ、お前は」
笑いながら立ち去る優の言葉に
昴は再び顔を赤くし、動きがとまってしまった。