フィルムの中の君



そっと近寄るとすやすやと寝息を立てて寝ている。
ここ最近あまり見ることのなくなった寝顔を見て、思わず口元が緩む。


どんなに根性があろうが、素晴らしい演技をしようが、まだ16歳の女の子。
こうして見るとやはりあどけない。


長い髪を顔から払うと、色白な肌が現れる。
手が当たった感触は寝ててもわかるのか、「んー…」と寝返りを打った。


この映画が終わったらゆっくり休ませてあげよう。
そう思った水島の脳裏に先程の昴とのやり取りが蘇る。


クランクアップの時期を聞かれ、10月ごろだと答えると少し悲しそうな顔をしていた。


「10月って何かあったっけ…」


仕事関係では無さそうだし、芽衣絡みのことではない。
あとは優か学校関係か…


あっ、と言う声を出す。


高校の文化祭の時期が確か10月だったことを思い出した。
去年は仕事が入ってしまい出れなかった昴。


…そっか、文化祭かぁ。


せっかくなら高校生としての楽しみを味わってもらいたいし、いい思い出を作って欲しいと願う水島。


自分が高校時代普通に過ごしてきた思い出やイベントも、彼女にしてみたら貴重な思い出だろう。


すやすや眠り続ける昴の頭を優しく撫でた。


3日間ある中のせめて1日だけでも今年は行かせてあげたい。
手帳を開き10月の予定を確認する。


何としてでも文化祭の日は空ける。
1日ぐらいどうにかなるわよ!


と、水島は再来月の予定を立てた。




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