フィルムの中の君
「何かやりたいものあるー?」
クラスの学級委員 今泉有紗が問う。
当然意見はバラバラで纏まるはずも無く、纏めようとする生徒も出てこない。
「なんか…凄いね」
去年もそうだったの、という芽衣の言葉に学級委員の大変さを思い知らされた。
どうにかしてクラス中からのバラバラな意見を纏めた結果、多数決で喫茶店という結果に。
「飲食物扱うとなると…」書類を読み上げる学級委員の有紗。
それから最終確認をとり2組は喫茶店をやることになった。
「喫茶店かぁ〜。何か楽しみ!」
と、うきうきする昴。
「でもここで決まっても、プレゼン通らなかったらパアになっちゃうんだけどね」
初耳な話に、なにそれ!?と聞き返す。
「先生数人と文化祭実行委員、生徒会役員にクラス企画のプレゼンをしなきゃいけないの。そこで細かいことも色々聞かれるらしいんだけどね。だから代表はプレゼンに手が抜けない」
去年は学級委員の今泉がプレゼンをし、一発で企画は通ったという。
(さっすが有紗、凄いなぁ)
その話し合いも終わり、授業時間が終わるまでは各自自由で!という指示に一気に賑やかになる教室。
昴が芽衣と話していると、教卓から1人こっちに近付いてきた。
「ねぇ、昴」
印象的なポニーテールを揺らし有紗が声をかける。
「次の話し合い来週のこの時間なんだけど…学校にいる?」
「えーっと、ちょっと待ってね!
来週は…」
カバンからそっと取り出した携帯でスケジュールを確認する。
「あ…ごめんね有紗、
その日は午前中で早退なの」
その返事に表情を変えることなく、そっか、とだけ返した。
「前持ってそれとなく聞き回ってたんだけど、喫茶店だとメイドカフェとか仮装、コスプレになりそうなんだけど…。
なにか昴やりたくないものとかある?」
あくまでも事前のアンケートだから確定じゃないんだけどね、と笑う。
すると昴は、
「メイドカフェ!コスプレ!!」
異様なまでに目を輝かせ有紗を見る。
「う、うん、まぁ予想なんだけど…」
「そういうのやってみたかったの!!」
オッケー!ありがとう昴!と残し、有紗は自分の席に戻った。
「有紗、本当に優しいよね」
「そうだね。あんなに気を遣ってもらえて感謝してるよ」
優しい友達の気遣いに昴は感謝しながら文化祭を楽しみにしていた。