フィルムの中の君



立ち去る有紗と入れ替わるように昴の席に近付いて来たのは、近くの席に座る仲のいいクラスメートの女の子。


「ねぇ昴ちゃーん」
ショートヘアを揺らしながら来た。


「今年は文化祭どうなの?」


「どうだろう…予定によるけど
出れたら出たいなぁとは思うよ!」


そっか、と言い俯く。
そして昴の目を見たり机を見たり彼女は視線を泳がせていた。


いつもなら物事をハッキリ言う友達のそのリアクションに不思議がる昴と芽衣。


言いずらそうに、ゆっくりと口を開く。


「あの…さ、昴ちゃんならもしかして知ってるかもって思っただけで、深い意味は無いんだけど…」


「えーっと…なんだろ?
わかることなら答えられるよ」


あの…、ともごもごさせ、なかなか言い出そうとしない。


「えっと…その…彼のことなんだけど」


「うんうん。……え?彼?」
唐突に出た第三の登場人物に昴はぽかーんとする。


彼というからには男性なのだろう話の人物が誰だかわからず、目で相手に聞き返した。


「1組の…宮藤くん!」


「あ、優のこと?どうしたの?」


「宮藤くんって彼女とかいるの?」



昴は想像通りの質問に返答を考える。
こういう手のことは下手な答え方をすると問題になりかねないからだ。


「もしかして優のファンなの?」


笑いながら冗談で話を逸らそうとする。


「いや、そうじゃなくて…」


彼女の反応は想定外に真面目だった。


「これ人には言わない方がいいのかもしれないけど、昴ちゃんには言ったほうがいいのかもしれないって思って…。
この前…って言っても数日ぐらい前なんだけど、宮藤くんが一緒にいるところ見ちゃったんだ。…女の子と」


まさかの告白に昴は固まる。
すかさず芽衣は「見間違いとかじゃなくて?」と聞いた。


「ううん、制服着てたし顔も見たから本人だと…」


「どこで…どこで見たの?」
微かに昴の声は震えていた。


「駅前でうちの学校の制服来た子と…」


誰といたの?と言う昴の質問は声になる前に、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。


「すば…」


「じゃあね芽衣、また明日!」


心配そうにする芽衣に手を振り教室を出て行く昴。




(そっか、優にはそういう子いたんだ…)


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