フィルムの中の君



翌日、水島に起こされるよりも先に目が覚めリビングへ向かった。


「おはよー昴、早いね」


「おはよう水島さん」


水島は元気のない声が気になりつつも朝食を作る手を動かしていた。


「卵なんだけどさ、目玉焼きとスクランブル…」


「ねぇ、水島さん」


なに?とフライ返しを動かしながら問う。
昨日帰宅してからずっとこんな感じで、どうするべきか水島は考えていた。


「今日、学校休んでもいい?」


その突然な言葉に、どうしたのよ、と言いたげに顔を上げると昴は真面目な顔をして水島を見ていた。


「なに、具合でも悪いの?」


「ううん…違うの…。
でも撮影はちゃんと行くから」


どっちみち今日はお昼前で早退の予定だったので、水島は深くは追求せずに欠席することを承諾した。


「卵は…目玉焼きがいいな」


それだけ言うと昴は顔を洗いに行った。


目玉焼きとベーコン、サラダ、トーストがのったワンプレートとヨーグルトをテーブルに並べる。


そこに戻ってきた昴はいつもと同じ表情(かお)でテーブルに着く。


「わ!美味しそう〜!いただきます」


「はーい、どうぞー」


目玉焼きを崩しベーコンと一緒に口に入れる。
いつもと同じようにやっぱりこれ美味しい〜!と満面の笑みを浮かべ、朝のニュース番組を見ている。


それはよかった、とさりげなく様子を伺うと何らいつもと変わりない雰囲気に戻っていた。


あんまり触れずにおこう、と水島もいつも通りに振る舞うことを決めた。


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