フィルムの中の君
「どうぞお座りください」
とソファーに腰をかけるが平井はどこか落ち着かず、そわそわと手を動かしていた。
「ごめんなさい、やはり平井さんお忙しかったですよね…」
「い、いや!いいえ!全然そんな!!
ちょっと緊張してしまって」
緊張?と聞かれ「前からあなたのこと綺麗だなって思ってたんです」なんて言えるわけなく、適当に平井は誤魔化す。
その後どういう用件なのか平井は聞こうとした。
「最近…宮藤くんどうですか?」
「え!?宮藤く…あ、うちの優ですか?」
慌てて言い直す平井をふふっと笑い、再び話を戻した。
「皆様のおかげで仕事の方も順調にやらせていただいてますよ」
形通りの言葉を平井は返す。
「宮藤くんすごい活躍されてますものね」
「いやいや…櫻井さんほどではないですから」
愛想笑いの後、沈黙が訪れる。
はっきり核心を突いてこない水島に正面から投げかけた。
「何かあったんですか?」
「それが明確にわからなくて…」
この時初めて平井は俯く水島の顔を見た。