俺、兄貴になりました③
「もういい。俺がお前らの休みの交渉する」
「えー、つまんなーい」
「せっかくまた脅せると思ったのにー」
「お前らなぁっ…!!」
「「ウソウソ、嘘だって。怒んないでよ」」
今の絶対本音だろっ!!
「ねー、翔にぃ。それって父さんと母さんもくるの?」
ミートソーススパゲティをくるくるとフォークに巻きつけながら、慎が聞いてきた。
「あぁ。そもそも旅行に行くかって言い出したのは親父だからな」
「ふーん」
聞いておいて、反応が薄いな。
普通なら、普段忙しくて会えない親が来るって知ったら喜ぶもんなんだけど。
…こいつらの場合、家庭が複雑で苦しい思いしてきたからな。
そもそも、小さい頃から親が側にいないんじゃ、親っていうものがどういうものなのかも分からなくて当たり前だ。
だからこそ、俺や凛に甘えて欲しいんだけど。
「じゃ、旅行の件はこれで決まりな。行き先はまだ決まってねぇけど、とりあえず温泉に行くのは決定らしい。お前ら準備しとけよー」
「「はーい」」
こうして初めての家族旅行が決まったわけだけど。
ちゃんと無事に行けるのか…。
こいつらのことだ。
行った先で何かやらかす可能性もある。
俺は心配事で頭が痛くなった。