風は囁く「君と輝きたいから」
10章/熱き血潮の
事務所に戻ったのは、20時過ぎだった。

レッスンにギリギリ滑り込むようにして、駆け込んだ。

何があったのか、何処に行ってきたのか、昴も空も何も聞かなかった。

俺は、いつもレッスンの前には、はしゃいだみたいにMAXでストレッチをする。

「いつもと様子が違うな。何があった?」と、聞かれやしないかと恐かった。

忙しさの中、1週間が何事もなく過ぎていったけれど、俺は1日1回、必ず詩月さんと岩舘さんにメールで連絡をとっていた。


「『週刊Face』見た?」


「見た見た、大丈夫なのか?」


「Xceonとコラボしてるヴァイオリニストだよな。やっぱりあれ、本当なのか」

テレビ局やロケ先、行く先々で、ヒソヒソと話されている会話。

ロケ弁当を食べている時、俺のスマホが鳴った。


――遥くん、週刊Face見た?


電話の声が筒抜け。

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