風は囁く「君と輝きたいから」
「ローレライ、上等だ。
ローレライにだって、心はある。
伝えたい思いがある」

妹尾さんの顔がみるみる険しくなっていく。

唇を噛みしめ、詩月さんを睨むように見つめている。

詩月さんは、凍てついた空気を破るように、穏やかに笑顔を作った。


「妹尾さん、思いを音に託して思い切り語りませんか?」


「えっ!?」

何を言い出すの!? と言いたげな妹尾さんに、詩月さんは続ける。


「あなたの本当の音が聴きたい。あなたの本当の演奏が聴きたい」


「わたしはあなたなんか、大嫌いよ」


「わかっています。
だから、その思いを全力で弾いてください。
差しで弾いてみませんか?」

詩月さんはヴァイオリンを左手に握りしめる。


「ローレライを退治したいのでしょう!?」


「生意気に」

妹尾さんの瞳に力が宿る。
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