風は囁く「君と輝きたいから」
「あのさ、デュエットなんだけど」


「はあ!?……」


「二重奏だよ。主張しあってどうするのさ。
協調しあわなきゃ、二重奏にならないだろ!?」


「あなた……ふざけてるの?」


「本気だけど……あのさ。そんな悲痛な顔して、曲を奏でて楽しい!?」


「あなた……バカなの!!
私、あなたを半年以上も……」


「指導してくださってるんだろ!?」

妹尾さんの言葉を遮り、詩月さんは笑顔で言う。


「指導って……」


「違った?」


「!! あなたは……大バカだわ」


「さっきからバカって連発、ひどいな。
これでも、聖諒大音楽科の全額免除特待生なんだけど……」

詩月さんは暢気に言いながら、薄い茶色のふわふわした髪を掻きあげた。


――この女性がNフィルで、詩月さんをずっといじめていたんだ

そう確信した。

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