風は囁く「君と輝きたいから」
音楽科の緒方郁子さんは、正門前のカフェ·モルダウで「あなた、わかってるの? 自分が今、どんな立場なのか」って、動画のことを周桜くんに、すごい剣幕で声を張り上げたらしい。

周桜くんは冷静にこたえたそうだ。

「『Let it Be』だ。あるがままでいいだろう。
別にやましいことをしてるわけではないし、人から何を言われても、どう見られても。
本当のことは、自分自身が1番わかっているんだから」と。

信じられないって思った。

おばあちゃんから聞いてたイメージと、全然違うじゃないって思う。

ポーカーフェイスで冷静で、何をしてもちゃんとしている――そんなイメージがガタガタと崩れていく。


Nフィルの楽屋前。
演奏終了後の周桜くんの姿が、あまりにも辛そうで可哀想で、抱きしめずにはいられなかった。

おばあちゃん自慢のヴァイオリニスト、周桜くん。
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