風は囁く「君と輝きたいから」
それどころか、ストーカー紛いの聴き手と一緒にされたことが、悔しい。


――あんな人知らない。あんな人が……おばあちゃん自慢のヴァイオリニストだなんて

そう思った。

だけど……週刊Faceの記事を観た時、胸が苦しかった。

動画を観た時、言葉が出なかった。


周桜くんのヴァイオリン演奏を、生で聴きたいと思った。

心の奥底にまで、優しく暖かく染み込んでくる音色。

大好きな音色を聴きたいと思った。

大好きな音色を奏でる周桜詩月に、会いたいと思った。


「周桜って、あんなキャラだったんだ。もっとクールな奴だと思ってた」


「だよな」


「でも、去年の秋だったかな。食堂で周桜が騒動起こしたことがあったんじゃないか?」


「ああ、生徒会長を平手打ちした事件な」


「あの時は生徒会長が、周桜が腱鞘炎だっていう噂を流したからだろ」

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