風は囁く「君と輝きたいから」
「千住だったっけ?」


「ええ。体、大丈夫なの?」


「まあな。モルダウへ行くんだが、どうだ?」


「音楽科の溜まり場でしょ!?」


「悲しいことを言うんだな」


「聴きたい音色を選ぶ権利はあるわ」


「ろくな演奏を聴いていないみたいだな。リリィの愛した曲、聴いてみないか?」


「リリィ!?」


「千住百合子、師匠の愛称だ」


「何でリリィなの?」


「百合子だから」


「ふーん。Nフィルはどうなの? お局様とは和解できたの?」


「良好だ。『沈黙は金』なんかじゃない。週刊誌と動画は、いいきっかけになった」


「半年も苛めに耐えてたって本当なの?」


「ずいぶんストレートに聞くんだな」


「だって、出の前あんなに震えてるなんて思わなかったから」


「オケは、街頭演奏みたいに誤魔化しが利かないから、毎回緊張する」

< 146 / 325 >

この作品をシェア

pagetop