風は囁く「君と輝きたいから」
そう言いながら、周桜くんの表情は明るい。


「コンマスなんて絶対にしたくないな」


「意外ね。学オケのコンマス安坂さんより、あなたの方が上手いって聞いてるわよ」


「わかってないな。安坂さんほど、正確で完璧な譜読みをするヴァイオリニストはいない」


「そうなの?」


「うちの学オケは個性の強い奴が多い。それをあそこまで纏められるのは、安坂さんだからだ」


「学オケが個性的っていうのは、CMの演奏してる金管楽器メンバーを見たからわかる気がする」


「……外見の話をしてるわけではないんだが」


「わかってるわよ」

周桜くんは呆れたような顔をする。


「何か?」

歩きながら、周桜くんに訊ねる。


「リリィの指導がなかったら……」

周桜くんは胸に、ギュッと手を当てる。

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