風は囁く「君と輝きたいから」
「音楽を続けていたかどうかわからない」


「どういう……?」


「父と比較され、Jr.と呼ばれるのが堪らなく嫌だった。親の七光りって言葉が今でも嫌いだ。『心で弾く』っていうリリィの言葉の意味、リリィから街頭演奏を勧められ弾きながら、ずっと探していたんだ」


「意味、わかったの?」


「ああ。心で弾くは『音を楽しむ』って意味だ」


「音を楽しむ?」


「そう、音楽。漢字で音を楽しむって書くだろう。心で弾かなきゃ楽しめないし、何も伝わらない」

周桜くんは、生き生きとした笑顔で話す。


「1人では、たぶん意味がわからなかった。リリィから街頭演奏を強いられなかったら、ずっと自分の殻に閉じこもったままだった。聖諒に、この学校に来なければ、わからないままだった」

おばあちゃんの日記で、周桜くんの指導を、お弟子さんに託した後のことを記した日記があった。

聖諒に転校してくる前の周桜くんのこと。

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