風は囁く「君と輝きたいから」
「そこにNフィルの妹尾さんを、たまたま見つけたんだ。一石二鳥だと思った」


益々、開いた口が塞がらない。


「ただでさえ、キレてるのに『ローレライ』なんて言われたら、怒り心頭だろ!? 勢い逃したら言い返えせないって思ったら、周りなんて気にしていられなかった」


「信じられない。……即興もいいところだわ」

緒方さんは唖然とし、口をポカンと開けている。


「即興は苦手じゃないし、だてに街頭演奏はしていない」


「お前はホント、見てて飽きないよ」

安坂さんは声を上げて笑い出してしまった。


「危なっかしくて見てられない。日記の中のイメージとは大違いね」


「本当に。あなた、もっと冷静な人だって思ってた」


「冷徹人間みたいに言うんだな」


「だって、あなた転入早々、趣味は読書ってこたえたきり、他は『詮索されるのは嫌いなんだ』って、たった一言で場を凍らせたのよ」
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