風は囁く「君と輝きたいから」
12章/笑顔の下で
「詩月さん、遅くに電話ゴメン」


――何かあった?


数回コールの後、詩月さんの声。

詩月さんは「もしもし」でも「遥?」でもなく、「何かあった?」と訊ねた。

電話越し、詩月さんは俺の不安を瞬時に察したように。

昴と空は側で聞き耳を立てている。


詩月さんの耳は、音に敏感なんだって思った。

声の調子で、心の内までわかったのかもしれない。


――ちょっと待って、今ハンズフリーにするから


早口に言った詩月さん。



――ヴァイオリンの手入れをしていたんだ。で、何か問題?


「あのさ。スポンサーが……Xceon(エクシオン)コンサートのスポンサーが勘違いしていて。
詩月さんが、Xceon(エクシオン)のメンバーだって思っているみたいで」
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