風は囁く「君と輝きたいから」
「……そうやな。コンサートの中止考えてる暇なんてないんや」

昴がポツリ、真面目な顔で言う。


「コンサートで『Jupiter』を弾いてXceon(エクシオン)の力、見せたいよな」

空はアイドルスマイルで、明るく言った。


なじかは知らねど
心わびて

昔の伝説(つたえ)は
そぞろ身に沁(し)む
寥(さび)しく暮れゆく

ラインの流(ながれ)
入日に山々
あかく映(は)ゆる

美(うる)わし少女(おとめ)の
巌(いわ)に立ちて
黄金(こがね)の櫛とり

髪の乱れを
梳(と)きつつ口吟(ずさ)む
歌の声の
神怪(くすし)き魔力(ちから)に
魂(たま)も迷う

漕ぎゆく舟人
歌に憧れ
岩根も見為(みや)らず

仰げばやがて浪間に沈むる人も舟も神怪(くすし)き
魔歌(まがうた)謡うローレライ

――ローレライ
ハインリッヒ·ハイネ作詞
近藤朔風 訳詞


夢を見た。
ローレライの夢。

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