風は囁く「君と輝きたいから」
俺たちは午後から、みっちり2時間のレッスンを終え、汗を拭きながらスタジオを出る。

事務所ビル内のスタジオ。
来客用の通路ではなく、スタッフ用の通路にあるエレベーターに乗り、階を移動した俺たち。


開いたエレベーターの前。詩月さんが立っていた。


「詩月さん!!」


「ダンスのレッスンか?」

Tシャツに下はジャージ姿で、タオルを持った俺たち。

詩月さんは穏やかに訊ねる。


「みっちり2時間もね~」

俺は元気いっぱいこたえる。


「マネジャーには会えたん?」

昴が、仏頂面で詩月さんをじっと見つめる。


「ああ、楽譜をもらった」

詩月さんの顔色が悪い。
いつもの青白い感じとは違っている気がする。


「Nフィルの合わせがあるから、また」

詩月さんは、俺たちと目を合わさない。
空が「周桜さん」と呼ぶ声も届かなかったのか、急ぎエレベーターに乗る。
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