風は囁く「君と輝きたいから」
 扉が閉じるまで、無表情だった。


「様子、おかしなかった?」

 昴がそう訊ねると空が、すぐさま答える。


「……Nフィルの控え室の時みたいな顔して……」

 俺は階段を急いでかけ下り詩月さんを追いかけ、ロビーで詩月さんの後ろ姿を見かけ呼び掛けた。

詩月さんは振り返りもせずに、人混みに紛れ姿を見失ってしまった。

詩月さんのスマホに電話をかけ呼び出し音を何度鳴らしても、詩月さんは出なかった。


「呼んだんだけど、気づいてもらえなかった」

 数分後、ガッカリして空たちの元に戻った俺。

 次の仕事に移動する合間も、俺は詩月さんの様子が気になってしかたなかった。

桃香さんにも、電話をかけてみたけれど「とくに何もなかった」と素っ気ない返事だった。


「詩月さんが何もなくて、あんなに不安そうにしてるはずがないだろう」


 俺は仕事と仕事の僅かな合間、スマホを取り出し再度、詩月さんに電話してみる。

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