風は囁く「君と輝きたいから」
周桜くんは言いながら、緒方さんの肩を抱き寄せた。


「……周桜くん」

思わず呟き、目を逸らす。


「君の涙は見たくない。悲しむ顔は見たくない。
君には、いつも凛としていてほしい」


――イヤだ。聞きたくない

ずっと燻っていた思いや気持ちが何なのか、自分が周桜くんをどう思っているのかが、はっきりとわかった。

周桜くんは緒方さんを抱き寄せたまま。
カフェ·モルダウの中央に澱と構えたグランドビアノの前だ。

ポーカーフェイスと言われている周桜くんの意外な姿に、店内は静まり返っている。


「ウソでしょう!? あの周桜くんが」って、驚きの声や悲鳴が聞こえてきそうだ。


「自分の意志で希望を見出だせ。そう言ったのは……君だろう。
届かないなら届くまで追ってこい。
追いつくまで諦めるな」

周桜くんがそう言い終わると、店内がいきなり騒がしくなった。


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