風は囁く「君と輝きたいから」
16章/「シレーナ」を奏でるヴァイオリニスト
 コンサートのアンコール「Jupiter」演奏後、幕が降りた瞬間。

 詩月さんの体は崩れるように脱力し、俺たちは「詩月さん!!」と何度も呼んだ。

スタッフも騒然とし、慌てて数人が舞台に駆け上がった。

マネジャーが慌てる俺たちやスタッフを掻き分け、叫んだ。

「周桜のことは任せろ。お前らは早くファンの相手をしろ」

 俺たちは後ろ髪を引かれながら、ロビーに走った。

 俺たちがロビーで握手やCD販売、写真撮影をする間。

マネジャーは、倒れた詩月さんの対処に追われたようだ。

マネジャーが、詩月さんが倒れた時に備え、医者の手配をしたり、詩月さんの主治医に連絡を取ったりと、手を打っていたことを後で知った。

詩月さんは三〇分近く、失神していた。

気がついてXCEONの楽屋を訪れた詩月さんは、マネジャーに丁重に礼を述べた。

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