風は囁く「君と輝きたいから」
「周桜くんのヴァイオリンを触ったことはありますか?」

 マイクを向けられ、幾度も沢山の質問をされたけれど、どう答えていいのか? 下手に答えるとかえって、詩月さんが不利にならないか? 色々考えると答えに詰まった。

 マネジャーは俺たちに何もコメントするなと命じた。

俺たちは詩月さんがどれだけ頑張っているかを知っていて、どれだけ努力しているかも聞いていて、どれだけ真剣かも間近に見てきたつもりだ。そんな詩月さんの音色が人の心に響かないはずはないと思っている。

例え、詩月さんのヴァイオリンが本当に船乗りを惑わすように、人の心を惑わす力を持った楽器だったとしても、詩月さんならその魔力を抑え、詩月さん自身の音色で聴き手を感動させられると信じて疑わない。

「詩月さんはローレライなんかじゃない。詩月さんのヴァイオリンは人の心を惑わしたりしない」


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