風は囁く「君と輝きたいから」
彼らは「詩月さんは大丈夫?」と訊ねる俺たちに、口を揃えキッパリと力強く言う。

「あいつはそんなヤワじゃない。安心しろ」

 詩月さんは彼らのその言葉通りだった。毅然としてヴァイオリンを弾く。

テレビのワイドショウでも、詩月さんの街頭演奏に以前にも増し観客が集っていると報じられた。

「こんなにまで色々ひどいことを言われいてるのに、無理して『シレーナ』を弾かなくても。しばらく『シレーナ』を封印すればいいのに」

 小百合さんがカフェ・モルダウで詩月さんに言った時には、モルダウに来ている学生たちから、総スカンを浴びせられたらしい。

「あんな週刊誌のデマやメディアの戯れ言、誰も信じていない。周桜の演奏は『シレーナ』を弾いているから凄いんじゃない。周桜が『シレーナ』を弾くから凄いんだ」と。

――信じらんない。モルダウの常連客は、詩月くんの熱烈なファンばかりだわ


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