風は囁く「君と輝きたいから」
周桜くんは、10年分のおばあちゃんの日記をちゃんと読んで、理解しているんだって思った。


「目指しているコンクールがあるのは知っていたが……。
リリィさんと、そのライバルだった間崎元准教授が……予選落ちしたコンクールで決勝を狙う、その自信があるのか?」


「自信なんて……ありません。
でも敵討ちをしたい。そしてリリィを越えたい。
何より、『シレーナ』で勝ちたいんです」


「ずいぶん欲張りだな」

そう言いながら、安坂さんの目は笑っていない。

周桜くんは、挑戦したいという以上、それなりの覚悟はしているんだろうと思う。

「シレーナ」で勝ちたい――っていう意味が、どれ程深い意味なのかを考えてしまう。

周桜くんは、ヴァイオリンが名器だからではなく、自分の実力を証明したいんだって……。
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