風は囁く「君と輝きたいから」

「入試のピアノ実技で『ラ・カンパネッラ第３番変イ短調』を弾いた奴だからな。作曲から１７０年以上経っているのに、録音したピアニストが、僅か４人しかいない幻の名曲、超難曲だ」

「周桜は実技試験当日３９℃の熱をおして演奏したんだぜ。あの超難曲をノーミスで完璧に。ったく、周桜宗月もビックリだよな」

ラ・カンパネッラなら俺も知っている。

連符だらけの超が３つ以上つきそうな難しい曲だ。

「ラ・カンパネッラ」は鐘の音だとも聞いた。

「ラ・カンパネッラ」に嬰とか変とか、色々な曲があるというのは初耳だった。

桃香さんが、丸い目を更に丸くして聞いている。

「翌日、ヴァイオリンの実技試験はハプニングがあり、演奏中断か？　と思ったらしいですが、演奏終盤にヴァイオリンの弦が１本切れて」