風は囁く「君と輝きたいから」
「詩月さんってさ、留学のこと……郁子さんには話したのかな」


「どうやろな、ハッキリ決まるまで話さへんのとちゃう?」


「追いかけてこいって言ったときには、もう留学を考えてたのかもな」

俺たちは夜、そんな話をしていた。


「遥、スマホが鳴ってる」

俺は空に言われて、リュックからスマホを取り出す。

着信は小百合さん。


――信じられない!?

小百合さんの声は、興奮気味で丸聞こえで、ガンガン響いて、俺はハンズフリーにする。


――周桜くん、緒方さんに留学のこと、何にも話してないの


空が小さくやっぱりなって感じで呟く。

俺も側で、やっぱりと声を漏らす。


――岩舘さんがね、緒方さんに「詩月に、追いかけて来いとまで言わせても、まだメソメソしてるのか」って


「へぇ~」


――高2の時、ドクターストップで留学諦めて、ピアノを止めようとしてた周桜くんを、緒方さんが「諦めるな」って思い留ませたらしいの

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