風は囁く「君と輝きたいから」
「えーーーっ!?」

俺が思わず叫んでしまった声が、昴と空、桃香さんとハモった。

音楽もヴァイオリンも詳しく知らない俺でも、ヤバイと簡単に言える状況ではないのは想像できた。

「周桜は慌てた様子もなく落ち着いて顔色1つ変えずに、残りの弦を駆使して転調させた上に、ピチカートで最後まで弾き通したんだ。こんな風に……」

安坂さんはヴァイオリンを構え、指で弦を弾き音を出し、実演をして見せた。

「スゲーェ、普通なら真っ白だろうに」

空がボソッと言う。

「だろう!? 試験官が慌てて『弦を張り替えなさい』と言い終わらないうちに、演奏続行したそうだ。適応力がというか、切り替えの早さはピカイチだよな、周桜は」

周桜さんの実力がいったいどれほどスゴいのか、俺には想像もつかない。
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