風は囁く「君と輝きたいから」
こんな風に、笑顔で声を掛けてもらえる日が来るなんて考えられなかった。

初めてNフィルで、ヴァイオリンを弾いた日の凍てついた空気と視線。

僕は思い出して、クスリと笑う。


「余裕か? お前の慌てる顔や焦った顔とか、照れる顔を見てみたいよ」


「あら、音色が変わったのは恋かもしれないわよね」


「妹尾……さん!?」


「いるんだろ、周桜?」


「い、いませんよ」


「すご~く、綺麗な彼女とXceon(エクシオン)のコンサートに来ていたって噂があるわよ」


「違っ……いじわるだな、妹尾さん」


「ちゃんと告白はしたの? 留学している間に、誰かに取られちゃうわよ」


「バカだな、妹尾さん。『季刊クラシック』見ていないんですか?」

如月さんが、おもむろに取り出した雑誌を広げて読み始める。


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