風は囁く「君と輝きたいから」
 「周桜は、街頭演奏を中学2年生から演っているんです。だから咄嗟の対応や、即興演奏に長けているんですよ」

安坂さんは自分のことみたいにドヤ顔で話す。

「俺は周桜を知れば知るほど、あいつがどんなに凄いかを実感します」

 聖諒学園は高校も大学も、私立でも名門と言われる音楽科があると聞いている。

「親の七光りだと言う奴らは、ボコボコに殴ってやりたい」

安坂さんが、周桜さんのことをベタ褒めしている。

安坂さんは大学オーケストラ部の次期コンサートマスターと言われているくらいスゴい人だ。

その安坂さんが「周桜は天才です」と躊躇いなく言う。

「周桜が4月から大学にくるのが凄く楽しみなんだ。俺は、周桜が周桜宗月を越える日がそう遠くないと思っている」

安坂さんは「周桜を宜しく」と、まるで自分の弟を俺たちに託すように、暖かい笑顔で言った。
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