風は囁く「君と輝きたいから」
風が囁くように優しく、僕の耳に届いた調べに、もし何か御加護があるなら……。
願掛けをしてもいいと思った。
「緒方……呼び出してすまない」
演奏を中断し、緒方に話しかける。
「いい曲ね」
「オルフェウスの下で聴いた曲だ。……真っ先に、君に聴かせたかった」
緒方が、あっと声を漏らし、頬を染める。
「緒方……11月早々、ウィーンに発つ。さっき書類を提出してきた」
緒方の目に涙が滲む。
「緒方……ウジェーヌ・イザイ国際コンクールに挑戦しようと思う」
僕は真っ直ぐに、緒方を見つめる。
「緒方、覚えてるか? 『追いかけて来い』って言ったこと」
「ええ」
「ウジェーヌ・イザイの再来年のピアノコンクール、君と挑戦したい」
「周……桜くん」
「……君の『雨だれ』を聴いた、あのコンクールから僕のライバルは、君しかいない」
願掛けをしてもいいと思った。
「緒方……呼び出してすまない」
演奏を中断し、緒方に話しかける。
「いい曲ね」
「オルフェウスの下で聴いた曲だ。……真っ先に、君に聴かせたかった」
緒方が、あっと声を漏らし、頬を染める。
「緒方……11月早々、ウィーンに発つ。さっき書類を提出してきた」
緒方の目に涙が滲む。
「緒方……ウジェーヌ・イザイ国際コンクールに挑戦しようと思う」
僕は真っ直ぐに、緒方を見つめる。
「緒方、覚えてるか? 『追いかけて来い』って言ったこと」
「ええ」
「ウジェーヌ・イザイの再来年のピアノコンクール、君と挑戦したい」
「周……桜くん」
「……君の『雨だれ』を聴いた、あのコンクールから僕のライバルは、君しかいない」