風は囁く「君と輝きたいから」
4章/心が奏でる音色
「楽譜が出来上がった」

桃香さんが「Jupiter」の楽譜を俺たち1人1人に手渡した。

 会議の翌日。
聖諒学園大学から、事務所に戻って間もなくだった。

スゴ~く綺麗で丁寧な楽譜は各楽器(トランペット、トロンボーン、ホルン、ヴァイオリン)パートごとに分けたものと、全体のもの計5種類。

周桜さんが会議で即興アレンジで弾いたホルスト作曲「Jupiter」――。

周桜さんはたった1晩で、5種類もの楽譜を仕上げ、FAX送信してきた。

CMプロデューサーもフローラ化粧品会社広報担当も、驚いていたと聞いた。

俺たちはコンサートマスターの安坂さんから、周桜さんは体が弱いと聞いたけれど、周桜さんが実際、どれほど体が弱いのか? よくわからない。

でも、学業とNフィルとで忙しい中、時間を割いて書き上げた楽譜だ。

――俺たちは、演奏に合わせて弾いているふり「アテブリ」をしていればいい

そのことが、ひどく申し訳なく思えた。
< 30 / 325 >

この作品をシェア

pagetop